北陸の峠道


欣求(ごんぐ)峠から娑婆捨(しゃばすて)峠


昨日3月18日(土)まで浦和から息子夫婦が一歳半の孫を連れて来ていた。昨日は能登の隠れ家から小松空港まで送っていったのだ。うちのかみさんもゴルフシーズン到来で、仲間からお呼びが掛かり福井へ帰って行ったので、隠れ家は火の消えた様な感じである。まあ、いつもの静寂に戻っただけのことかもしれないが。

そこで、今日は午前中は晴れの予想なので、奥能登最後の秘境と云われる海岸線にある猿山自然歩道へ行くことにする。ブドウパン一切れ半にマーガリンを塗り、あとバナナ一本を持って車に乗る。門前町は総持寺の少し手前の黒島から海岸沿いに深見へと向かう。

猿山自然歩道の深見の登り口はお寺の横から始まる。小さな港には綺麗な公衆トイレがあり車が4台程度停められる駐車場がある。しかし今日は満杯で道路にも駐車しており、全部で10台近くになった。私に前後して10人位づつのパーティが歩きだした。

海岸コースは背の高い笹藪の間に歩き易い道がある。登り始めにジンチョウゲの良い香りがしたし、短いうぐいすの鳴き声を聞いた。薄日でふんわりとして寒くはない。やっと少し春が感じられる。


(海岸コースの崖の上から)
断崖の上に出たり、崖の中腹にくっついた細い道をてくてくと歩く。看板にもここはケヤキの純林で森林浴はやや早足で歩くと良いと書いてある。何を採っているのだろうか山菜採りの方達の姿があちこちに見える。そうこうしているうちに「七浦―深見」の標識や観光案内板などがある断崖の上に出た。どうやらここが欣求峠らしい。


(欣求峠)
私の後ろからは8・9人が賑やかに登ってくるし、猿山への道へ数十メートル登ったところには15・6人がガヤガヤとしてかたまっている。ここは人気のコースらしい。猿山灯台はもうすぐみたいなので猿山(333m)へいってみることにする。
峠道と異なりゆったりとした尾根歩きと云う感じだったが、猿山頂上が見当たらないと思っているうちに、灯台の後ろを過ぎて娑婆捨峠の駐車場が眼下に見えるではないか、車が20台以上も留まっている。
娑婆捨峠も断崖の上にあり、名前の由来などが書いてある。2月の初旬に車でここまで来た時は、ここの公衆トイレの立派なドアには鍵が掛かっていたのだ。その時軽自動車で乗り付けたおじさんも残念無念だったのである。


(娑婆捨峠)
昔、猟師に追いつめられた鹿は、ここから200mもの断崖を飛び降りるしかなかった。娑婆を捨てるしかなかったのでこの名前がついたという。公衆トイレまでが舗装されていて、ここから猿山自然歩道が灯台へと始まっている。
すぐに逢瀬の谷に架かる逢瀬橋がある。そして猿山灯台。灯台は212mの海崖の上に屹立する。灯台の周囲は丁度昼時とあって満員御礼の状態だった。ざっと60人位はいたようだ。 私もそこでブドウパンをかじりバナナを食べた。15・6人の団体は出発の点呼をしたり大変だ。私の列びには3人連れのおばさん方が楽しそうにおしゃべりをしていて、これから総持寺の方へ向かうらしかった。その3人は出発の時私に写真を撮ってくれというので2枚ばかり撮ったら、カップゼリーを一個くれた。

風が強くなって汗が冷えて寒い。空も暗くなってきた。私も食べ終わって移動を始める。天気予報は午後から雨の確率が高いからゆっくりとしてはいられない。 灯台の後ろを少し登ると雪割草の群生地があり、白い色が多いが小さな花があちこちに咲いている。あまりに小さいので、写真を撮る人がロープの囲いの中に入って撮ろうとする姿が見られた。

(ゆきわり草)
10分程で先ほど通った欣求峠へ、いよいよ雨がぱらつきだしたのでカメラをしまい早足で深見集落へと降りる。 深見への急な坂を下りだしたら、下から中年の夫婦が登ってきた。雪割草の在るところはもうすぐですかいなと 云う。残念ながらまだまだなのだ。この後すぐに雨風が激しくなったのである。私は頭の帽子を抑えながら急な坂道を降りた。この帽子は西武デパートで5千円もした愛用の帽子なのである。

今日は7km強歩いた計算だ。人の多い秘境だっだ。

('00-03-19)


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