北陸の峠道


安倶峙峠(あごぜ峠)


今日は「隠れ家とその周辺点描」の「永光寺と蛾山道」でお馴染 みの蛾山道を、ほんのさわりだけ歩いてみようと思っている。そこに「あごぜ峠」という峠があるのだ。

前日の雨から晴れへと変わり能登の富来町へ向かう。街の入り口 から県道23号線へ曲がりそして富来町東小室で県道51号線 へ。入釜と云うバス停から山手へ登ると,小学校の前を通って舗 装が無くなるところの上に神社があった。
神社名が見当たらないので歩いて行くと,赤いほっぺのおばさんが狭い境内の掃除をし ている。こうして集落でこの小さな神社を守っているのだろう。


おばさんに尋ねると稲倉神社だという。そして峨山道も教えて貰った。親切にも車の置き場所まで教えてくれたのである。

所々雪の残った林道を,木を伐採するチェンソーの音を遠くに聞 きながら歩き出す。間もなく左手に峨山道の目印があり、「峨山道」と彫られた立派な石板が建てられている。 永光寺と総持寺を結ぶ52kmにも及ぶ峨山道だが、昔のままの 姿を残すところは少ないという。その点「峨山道」の石板で始まるこの峠道は貴重だ。是非歩いてみたいと思っていたのだ。



杉の落ち葉が積もった狭いV字型の登り道をゆっくりと歩く。今日は多分上の方は雪があるだろうから,近くても峠で引き返すこ とにしているので散歩という感じだ。
杉の木立の間から木洩れ陽が,道にまだら模様をつくっている。 見上げると良く手入れされた杉林が眩しい。峠道だけあってここ を小走りに通り抜けるのは厳しい。昔の修験者達のその様な姿が 目に浮かぶようだ。いつかテレビかコミックで見た姿しか想像で きないのであるが。

峠の手前は30〜40cmの雪があって、ずぼずぼと足が入り込む。 それも数十メートルの間だけだったが、峠の向こう側はだいぶあるみたいだった。雪の上には動物の足跡が道なりについていた。 稲倉神社から30分,字の消えた白い角柱が立っている峠に着く。 峠の名前が書いてあったのだろうか。書き直しておいて欲しいも のだ。そうしないと峠の名前が何処にもでてこないのだ。


気候の良い時にもう一度来て、向こう側へ降りてみたい。今日は 写真を撮って降りることにする。

近年、蛾山道は歩く人もなく荒れるにまかされていたが、この蛾 山道を「歴史の道」として復活させようと、門前公民館が昭和6 1年から調査に取り組み、昭和62年に第一回蛾山道巡行が18 名の参加によって行われたという。 その後、この蛾山道巡行は大きな反響を呼び、今は県内外から多数の参加者を迎え、毎年春秋の2回行われているそうである。


('00/03/05)


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