隠れ家とその周辺点描


焼き鳥「太鼓」




毎日が日曜日となってからは、能登の隠れ家で過ごす時間が多くなった。夫婦
で過ごす時には必ずのように行くのが、この焼き鳥「太鼓」という店である。

ここのマスターはゴルフ好きだったので、たちまち、うちのかみさんと意気が
あって、一緒にプレーもするし、店では ゴルフの話題に花が咲くのである。

マスターはまた、伝統的な和太鼓の保存・継承に力をつくしている。自らグルー
プを率いて若い人を育て、機会ある毎に いろいろな所で腕前を披露している。
能登にはあちこちの村々に、それぞれに個性のある祭りがあり、太鼓の音色
があるようだ。
マスターの住む集落の祭りに呼ばれて、キリコと呼ばれる巨大な御神燈を真夜
中に担いで回る祭りを見せて貰った。とても綺麗で幻想的だった。そこでもマス
スターやその仲間が太鼓を響かせて祭りを盛り上げていたのである。

焼き鳥「太鼓」に行くと、いつもまずネギマを10本頼むものだから、いまでは黙
っていても焼いてくれる。それで 生ビールを飲むのが楽しみなのだ。季節によっ
て岩海苔や天然の牡蠣などを出してくれるのも嬉しい。

私の隠れ家を利用された方は、一度はお連れしたいと思っている。

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マスターは,いま癌と闘っています。これについては、マスターの意思によって
ここに掲載することになりました。今行っている治療が早く効果をあげることを
祈っております。

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マスターは、平成11年9月5日永眠されました。
心よりご冥福をお祈りいたします。


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マスターが亡くなられてから3年半が過ぎた。店の前を通ったら店はすでに取り壊されていて、道沿いに
看板だけが寂しく立っていた。マスターあっての「太鼓」だったのだろう。平地にして売るのだという話だった。


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