病院の風景

血圧測定

 血圧測定は最初のうち一日三回位行われる。看護婦さんも入れ替わり立ち替わりいろ
いろな方が回ってくる。 見るからに若い看護婦さんが来た時のこと、最初右腕で測定し
首をかしげ、他の看護婦と測定器を 交換して計ってはまた首をかしげ、今度は左腕で計
ったがまだ納得が行かないらしい。
そして「主任、ちょっと音を聞いて下さい。」と、そばに居たおばさん看護婦に聴診器を渡
した。「主任」は少し難しい顔をして、さっさと空気を送って「112の62」と言ったのだった。

若い看護婦は、そのあと私の側の椅子に座って「事情聴取」みたいなことを始めた。その
時、さっきの 「主任」が少し照れ笑いの様な顔をしてやってきて、若い看護婦の背後から、
「コンピュータの検査結果は 出るけど、データの見方はどうするんだっけ」と聞いたので
ある。言葉では「主任」は理解が難しいらしく、 若い看護婦は「事情聴取」を中断して「主
任」と一緒に部屋を出ていったのである。

その「事情聴取」であるが、「何か信心をしてらっしゃいますか?」と云う質問項目があっ
た。「宗教と病気 との統計学的相関関係について」でも調べているのだろうか。まあ、宗
教によっては,他人の血液の輸血を拒否 して問題になったこともあるから、トラブルを避
けるためなのだろう。
この若い看護婦を困らせても仕方がないので、「無宗教」と答えたら、「日本の一般的な
浄土宗ですか」 と言う。浄土宗が日本の一般的な宗教とは知らなかったが、「無宗教だ
から、家には仏壇も神棚もない」 と云ったら、少し驚いていた様子だった。

そう言えば、ここは仏教王国と云われる土地柄だったかな?



次のページへ   「病院の風景」の目次へ   前のページへ