隠れ家とその周辺点描


御手洗池(赤蔵神社)

こうしてみると能登も見所がずいぶんとあるなと思う。私の隠れ家から20km足らずの所に、
幽玄と云うか鬼気迫ると云う様な所があるとは知らなかった。田鶴浜駅近くの赤蔵山の北面
一帯が神社の境内となっており、山頂以下「赤蔵山いこいの森」として整備されているのだ。

御手洗池(みたらし池)は、地元では「お池さま」と呼ばれ全国名水百選の一つである。幾多の
歴史と伝説を秘めながら枯れることなく湧き出る御手洗池であるが、天平二年(730)聖武天皇
の皇太子の眼病治療に使われたと言い伝えられているとの説明書きがあった。
赤蔵山縁起では、母の夢枕に能州赤蔵大権現に祈れば治るというお告げがあって、それを
聞いた天皇が赤蔵山での祈願を命じ、三十人余りの僧が赤蔵山で法華会を行ったところ、霊
験があらわれ眼病が治ったとあるらしい。



しかし、なかなか趣のある池だ。写真ではうまくその雰囲気が撮れてないのが残念だが、戦
国時代の悲しい物語がまつわる池に相応しい佇まいだ。

新緑萌える5月半ばの日曜日だというのに、ここ赤蔵神社の境内には人の気配が無く静まり
かえっていた。森の中の伝説に満ちた神社には静かさが必要なのだ。その静かさが拝殿をき
わだたせて美しく見せている気がする。スキャナーで読み込むとちょっとガッカリするのだが。



御手洗池と拝殿の中間辺りに奥の院へ行く石積みの参道がある。これが3・4百メートルあり、
なかなか急で苔むしていたり濡れていたりで滑る。降りるとき一回尻餅をついてしまった。拝殿
から少し降りると枯れたお寺・栄春院と怡岩院があり駐車場がある。続いて天神山親水公園が
あり、ここにも駐車場やトイレがあるのだが、今日は人っ子一人いないのである。静かで良いの
だが、なにかもったいないような気がしてならないのである。

(’00−05−14)



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