北陸の峠道


ザラ峠・五色ヶ原・刈安峠

針ノ木峠とこのザラ峠は、峠歩きを始めてから元気なうちに歩いてみたいと常々思っていた峠だ。
それが今年は両方共に歩くことが出来て、おまけに沖縄にも行ったりとなかなか忙しい夏だった。

ザラ峠へ向けて下から登るのは難しいので、横から下る格好でしか私には辿れないが、今回は
刈安峠から平ノ渡しまで峠道らしい峠道を歩けたし、刈安峠では明治13年(1880)に開通して
2シーズンしか供用されなかった有料道路の痕跡に触れることが出来て大変満足した。1人5銭
では採算が合わなかったのだろう。それに崩壊も激しく、補修もおいつかなかったのではないか。

立山駅からケーブルカーに乗ったのは午前9時20分になった。上の方は全体がガスに覆われて
いる様子。10時30分頃室堂着で一ノ越目指して歩きだす。そこから浄土山の富山大学の研究
施設のある処へ。ここまでは高校生の団体など大勢の人達とすれ違う。ガスの中、我々夫婦だけ
が竜王岳の方角へ向かう。すぐに急な下りで岩石ごろごろで歩きにくい。


一ノ越手前から室堂方面を望む

その急な坂の途中で突然大粒の雨に見舞われる。ザックから雨具がすぐに出ないし、ズボンなど
は履くのに手間取り、だいぶ濡れてしまう。何十分か雨の中を歩く。滑って転ばないように歩くだけ
だ。景色は何も見えないのだし、何処をどう歩いているのか判らない。雨も止んだようだと思ってい
ると鬼岳東面の標識、申し訳程度の雪渓があって、そこを歩く前に休憩とした。 この天気ではゆっ
くりと食事という訳にはいかないので、お菓子などをちょっと口にするだけだ。あまりこういう経験が
無いので、ザックから欲しい物がすぐに出て来ないのも困ったものだ。


鬼岳 右側の尾根を越えてきた。 ここで初めてこんな山の横腹を歩いてきたことを知る。

木道があってお花畑があった。トリカブトの色が本当に綺麗だ。ガスで周辺しか見えないが、少し
登りがあって、獅子岳山頂の標識がある。そしていよいよザラ峠への急坂だ。凄いガスが下から
吹き上げてくる。晴れていれば五色ヶ原が見渡せるはずなのだが、今日はいかんともしがたい。
また、坂が長い。一気に400m近くを下るので仕方がないが、ガスで峠を確認出来ないので余計
そう感じるのだろう。


ガスの中のザラ峠

歩き出して4時間40分、やっと念願のザラ峠に立つことが出来た。ガスが吹き抜けて写真を撮る
のも難しい。こういう処ではガスなど珍しいことではないだろうし、昔 峠を越えた人達は、塩などを
担いで長い道のりを歩いたのだから、さぞかし大変だったに違いない。遭難も多かったと思われる。
佐々成政の一行が辿ったと云われるザラ峠までのルートは判らないが、その道の荒廃の状況を調
べて復活させてはという話もあるらしい。


五色ヶ原から見る獅子岳からザラ峠へ下る斜面 ジグザグ道を登っている人が見える(翌日撮影)

ザラ峠から少し登り返すと五色ヶ原に出るのだが、五色ヶ原山荘までがだいぶある。木道をとぼ
とぼと歩いた。お花畑なのだが、少し時期を過ぎた感じだった。 4時10分頃、疲れ切って山荘に
入る。着くなり男性の入浴時間があと10分しかないので急いでくれとのこと、ザックなどはカミさん
に任せて取り敢えず入浴。服を脱いでお湯に浸かり服を着るまで5・6分という慌ただしさだった。

ひと部屋当たったので楽だった。今日の宿泊者は23人ほどの様で、ゆっくりとビールを飲みながら
食事をすることが出来た。女性だけで歩いている人が多い。皆さんいろいろな処へ行ってらっしゃる
のに感心させられる。
翌日は薬師の方へ向かう人、我々が来たルートで室堂へ向かう人、そして我々のように黒部湖へ
降りる者と別れたが、黒部湖へ降りたのは我々だけだったようだ。


朝6時出発 山荘の前で  右の山は獅子岳

今日は割と雲が少なく、周囲の山々も見渡された。五色ヶ原はこんな処かと木道をテクテクと歩きな
がら、昨日この位晴れていたら上の方から眺められたのにと、いささか残念な気分だ。下って行くに
つれ、ザラ峠を遠望出来る角度に来て何回も写真を撮った。ロボット雨量計を過ぎると刈安峠へ着く。


ザラ峠 左の台地は五色ヶ原  右は獅子岳 黒部湖へ下る道より写す

下から登って来た道が峠を越え、中ノ谷側へ降りて行く道が確認出来る。先に書いた有料道路の
名残なのだろう。そして、黒部湖の平の渡しへ下る道は、ここからブナ林の中をジグザクにゆっくりと
降りる歩きやすい道に変わるのだ。それまでの岩石ごろごろの道から落葉の積もった峠道なのだ。


刈安峠の標柱 判りにくい処にあった

3時間半かかってやっとのこと平ノ小屋に着く。外のテーブルで飲んだビールが美味しかった。とても
気持の良い処なのに、泊まる人が少ないのだという。 通過地点なので、眼下の渡し場に対岸から着
く人は、ほとんどダム堰堤へ行ってしまうらしい。10時半頃、渡し船が着いて10人位下船したが、皆
ダムへ向かって歩きだした。我々もその人達と抜きつ抜かれつで湖岸沿いを4時間以上も歩いた。


沢を渉るために長い梯子を降りる 反対側は長い梯子の登りが待っている

ほとんど平坦な道なのだが、大きな沢を渉るたびに梯子の上り下りがある。だけど延々と続くブナ林
の中だし、モスグリーンの湖面や、先月登った針ノ木岳を見上げたりして歩けるので、乗り物の時間
を気にしないで歩けたら良い道だ。


ダムの堰堤が見えた時は ほっとした瞬間だ

ダムに着くなり地下ケーブルカーの発車の時間で、ロープウエー、トロリーバス、バス、ケーブルカー
と乗り継いで、夕方6時過ぎに立山駅の駐車場に着いたのでした。 これで今年の夏も終わりです。

('05年8月19日〜20日)

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左の図の軌跡はザラ峠までしかありません。

五色ヶ原まで休憩を入れて5時間半程

五色ヶ原から黒部湖の駅までは8時間程歩き
休憩を長くとりましたので、合計9時間15分程
になりました。

2万5千分の1地図は 「立山」「黒部湖」

立山駅〜室堂間 片道 2,360円
黒部湖〜立山駅間 片道 6,560円

五色ヶ原山荘 1泊2食 8,400円