福井の小さな山歩記
多田ケ岳(’00・08・05)
小浜の街のすぐ近く、野代集落の妙楽寺から林道を数百メートル入ったところに登山口がある。
8時5分石の橋を渡って登り始めたが、道が草に覆われているし、蜘蛛の巣だらけで閉口した。
それに足を滑らすと谷へ落ちる様な危ない道が多いのである。足に気をとられていると、蜘蛛の
巣に頭を突っ込むことになる。最初の30分から40分は歩きにくい道だった。
1時間10分位で尾根に出て、それからはやや平坦な道が続く、初めての道は長く感じる。なか
なかで道を間違えたかと不安がよぎる。この山は道標というものが全くない。登山口にしても滝
の名前が、それもほとんど消えかかっていて読めないが、書いてあるだけだ。入山禁止の看板
だけがいくつもあった。
平坦な道を50分位歩いて、多田寺からの道に出会い、そこから頂上への登りとなる。20分位
で炎天下の頂上に出る。風も無く暑い。展望は良いがこの日射しではどうしようもない。頂上で
今日初めて多田ケ岳(712m)の名前を目にした。
2時間20分で着いたが、5分も経たないうちに大きなザックを背負った年輩の人が登ってきた。
なんと兵庫から来たという。使い込まれたガイドブックを見せてくれたが、そこに若狭三名山とい
うのがあって、今回それをまわるのだそうだ。私は若狭三名山が、ここ多田ケ岳、青葉山、飯盛
山の三つだということを今日初めて知った次第である。
この人は青春切符で移動していて、昨夜はJR加斗駅の待合室で寝たそうだ。疲れないのだろ
うか。この人はまた、地図も沢山持っていて、地面に広げてコンパスを置き、あれが青葉山、あ
れがどこどこ山と教えてくれた。そして頂上では水も食事も摂らず、30分ほどで降りていったの
である。今日これからまた何処かの山へ登るらしい。
頂上直下50mくらいの所にある行者の石像(両側)
中央は石碑、写真が悪くてよく判らない。
私はその後、冷たい缶ビールを飲み干した。つまみを忘れてきたので、勝山産のトウモロコシの
ゆでたやつをかじりながらだが、これは主食といった感じだった。あとバナナを一本食べて下山
した。
下山しながら先程の人のことが気になった。体力があるし脚が強いのだろうが、定年後で青春
切符などでお金を節約しながら楽しんでいるのか、働いていたとしても民宿に泊まったりしたら
せっかく青春キップで節約した意味がなくなる。
私はあの時、昨夜は民宿にでも泊まられたのですかと聞いてしまって、すぐに、この人に対する
質問ではなかったと思った。この人は、私みたいないいころかげんな人間とは違って、綿密な計
画の基に行動しているに違いないと感じられたからだ。駅に寝たのも、本当はツエルトを利用しよ
うと思ったが適当な場所が見当たらなかったからなのだという。
帰りにちょっと熊川宿の道の駅に寄って「ざるそば」を食べた。うずらの卵が付いていた。暑いお
茶が美味しかった。