北陸の峠道


風谷峠


金津町権世市野々と加賀市風谷町を結ぶ峠道で、峠の標高は地図で見ると500mと510mの間
にある。 ここからは刈安山へも剱ケ岳へも行ける馴染みの深い峠である。 冬になると谷の向きの
かげんで風谷から強い風が吹き、峠に登れないくらいのことがあるという。越前からは米を、加賀か
らは木炭などを運んだという古い記録があると云われる。



この右手に峠に向かう道がある

刈安山へ登る舗装された林道を行くと水車小屋があり刈安の滝と表示されている。そこに車を置い
て歩き始める。最初は車も入れる様な道だが、すぐに大きな木が倒れていて駄目とわかるが、それ
ばかりか歩く道も定かでなくなるのだ。

そこでGPSの示す方向へ道無き道を登り始めた。 やがて林道へ登り出た。そこで地図を見て今の
場所を確認したら、GPSの示す方向が剱ケ岳の位置を設定したらしい事が判った。 その林道を終
わりまで行って峠道へ戻った。そこからは所々U字型のつづら折りの道が続くよく見る峠道となった。
しばらく行くと獣の足跡だけが点々と続いている雪道となる。



左手前の雪が乗っているのがお地蔵さん

なかなかの峠道だが、そろそろかと思うころ雪の上に赤土の塊がごろごろところがっている。これは
と上を見ると、なんと赤土の土手によって峠道は遮られているのである。土手を斜めに登ってみると
そこは風谷峠ではあったが、広い道路が造成中でそこから剱ケ岳に向かって一部は真新しい舗装
がされていた。峠のお地蔵さんが鎮座していたのがせめてもの慰めだが、お地蔵さんの目の前には
峠の風情とは似つかわしくない光景が広がっているのである。



峠のお地蔵さん

途中道が判らなくなったこともあって1時間半近く掛かってしまった。そこから林道や登山道を30分
くらい剱ケ岳の方へ歩いたのだが、雪が深くて時間が掛かり、このまま頂上を目指すと頂上へは2
時過ぎになってしまうので、やめて引き返すことにして昼食にした。どこも雪で座るところもないので
立ったままサンドイッチをミルクコーヒーで流し込んだ。

この林道からは坂井平野が一望できる。しかし、登山道を歩いていると、すぐ足元が林道に削られ
て崖の上を歩くようなところがある。ずーっと平行していてときには交わるのだし、何か変なものだ。



2時頃風谷峠を後にして下り始める。しばらく行くと「風谷峠・徒歩15分・頂上まで300m」と書いた
板がころがっていた。峠を頂上と云うのもおかしいが徒歩15分と云うのもおかしい気がする。

登るとき通らなかった道を降りるのだが、初めから道らしいものはなく、小さい沢に沿って蔓や小枝の
歩きにくいところをただ下に向かって歩く。トゲのある草が多くて悩ませられる。やがて道らしいものが
あるなと思ったら、往きに歩いたところだと気が付く。狐につままれた気分だ。同じ処を歩いていて何
故往きには沢の反対側に居たのか?

謎は解けないまま1時間ちょっとで水車小屋に着いた。林道が出来て、林道の終点から登るようになり
この短い谷筋の道を歩く人は少なくなったのだろう。

(’01・04・01)


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