北陸の峠道
針ノ木峠・針ノ木岳・蓮華岳
針ノ木峠 (7月16日〜17日)
念願の針ノ木峠に登ることが出来た。北陸の峠道というのなら富山県側から登るのが相応しいと思
うのだが、距離が長く、そんなに歩く人もいないらしいので針ノ木大雪渓を歩くことにした。
針ノ木峠
は、針ノ木岳と蓮華岳の鞍部にあって 標高は2536mである。日本で1・2の高所にある峠だ。
佐々成政が、厳冬期にザラ峠を越え、黒部川を渉り、この針ノ木峠を越えて信州から浜松へ向かった
と伝えられている。単純に考えるととても信じがたい話で、違うコースを通ったのではないかという論
文も発表されている。夏には奥山廻り役人が藩境である針ノ木峠の警備や密漁などの取り締まりに
廻ったそうである。軍道だったのだろう。 当時は一般の人の通行は少なかったと思われる。
たまに
立山参詣の人が通ったのかも知れない。
明治初期には、牛馬でも通れる山岳有料道路の工事が着工されたが、頻繁に道路や橋が崩壊し
修復が困難なため廃道になったという。
森の中の大沢小屋
腰やら背中、膝などと故障が多いので、無理をしない極めてゆったりとした贅沢な日程をくんだので
山小屋に2泊することになった。何しろドライブは昼間が基本なのだ。 だいぶ時間にゆとりがあるの
だが、時間があるからと云って歩く時間や距離を多くすることが出来ないのが悲しいところだ。
扇沢駅の市営の無料駐車場に車を置き、1時間程歩いて大沢小屋に着いたのが夕方5時少し前に
なってしまった。小屋のオヤジさんは「予約なしに5時過ぎに来たって泊めてやらねえぞ」などと冗談
を言ってたが、山小屋は旅館とは違うのだから、もう少し早く着けということだ。我々が着いてすぐに
夕食の支度が始まった。今日の宿泊者は9人程で、6畳くらいの部屋に私達二人とゆったりしたもの
だった。部屋には灯りは全く無いので寝るしかない。
針ノ木雪渓
夜半にだいぶ雨が降っていたが、翌朝は晴れて6時頃、我々が一番最後に小屋を出た。40分程で
雪渓に降り立つ。次々と後ろから登山者が来てアイゼンを付けて峠へと向かう。
締まった雪の上を
歩くのとは異なり、あまり歩きやすいものではない。かなりデコボコしているのだ。
途中20mばかり
アイゼンを付けたまま岩を越える処があった以外は、峠まで雪渓が続いていてアイゼンを外すことは
なかった。峠直前は急登で皆さん辛いところだ。雪渓の横の斜面には夏道を歩ける処もあり、アイゼ
ンを付けたり外したりして歩いていた人もいたみたいだ。そちらの方が峠道と言えるかも知れない。
雪渓の上を歩くのが峠道を歩くことになるのかな等と考えながら歩く。多分、昔は夏道を拾って歩い
たのだと思う。それも砕けた岩の道で、あまり昔の雰囲気を味わえるというものでもないし、周りは
崩壊しやすい岩石で、道筋も頻繁に移動していたのだろう。雪渓の上も石が多かった。この日もころ
がって来た石に当たって怪我をした女性がいた。
針ノ木峠の針ノ木小屋
時間はたっぷりあるので、ときどき立ち止まって呼吸を整えながら最後の急登を登りきると、そこが
針ノ木峠だった。左は蓮華岳、右は針ノ木岳への急坂がすぐに始まっていて、その間の狭いところに
山小屋が立っている。狭い稜線の上なので、すぐに黒部川の平の渡しから五色ケ原の方へ降りる道
の標識があって、急な下りが始まっていた。こちらも歩いてみたい気がするのだが...。
我々が他の人を追い抜くことはめったにないので、大沢小屋からは普通3時間と云われているが
私達
は休憩を入れて3時間半程で着いた。
針ノ木岳 (7月17日)
蓮華岳への途中から見る針ノ木岳 鞍部は針ノ木峠 小屋が見える
大休止をして針ノ木岳へ向かう。初めは急登だが、やがて稜線の右斜面に付けられた岩だらけの道
を登る。しかし、なにやらお腹がゆるい状態になっている。人の往来は多いし岩石ばかりで隠れるとこ
ろが無いのにはまいった。
また稜線に出て急登を少し登ると山頂(2820.6m)、周囲の山々はガスに覆われて、待っていると
時折黒部湖がくっきりと緑色の水面を現す。遊覧船も見える。隣のスバリ岳への道は下って登り返す
のがきつそうだ。その鞍部へ向かって雪渓を登っている三人連れがいた。
腰を下ろしていたら、突然カミさんの携帯電話が鳴った。なんとゴルフ場からで、明日女性のメンバー
が1人欠けたので出てくれないかということだそうだ。いやはや...。
針ノ木岳山頂から黒部湖を見下ろす この日はガスが晴れず
もっと待っていれば、もう少しは眺望が開けたかもしれないが、それも判らないし針ノ木小屋へ戻ること
にする。針ノ木岳は峠から往復2時間程だ。我々は多少それよりはゆっくりのペースだった。
針ノ木小屋宿泊 針ノ木岳に登る前に受け付けをしておいたので、1人1畳位のスペースを割り当て
て貰うことが出来た。 しかし、部屋は幅がせまく、脚を伸ばすと反対側の人の足とぶつかる。
我々は
一番奧だったので、みんなが横になると部屋の外へ出るのにひと苦労する。おまけに大沢小屋の湿っ
た布団と違って、ふわふわの羽毛布団で、余計足下が判りにくいのだった。
私の隣の男性は早くからいびきをかきながら眠ってしまい、うるさいのと暑いのとで寝つけずに困った。
夕食は部屋毎で3交代で慌ただしく、ゆっくりビールを飲んでいる訳にはゆかず、皆さん、ずっと前に外
で飲んでいたようだ。 生ビールは1杯千円で、350mlの缶ビールは600円だった。 あとハーゲンダッ
ツのアイスクリームも1個600円だった。小屋の宿泊は夕朝食付きで8,800円、我々は大沢小屋で
泊まったので、1人につき500円引きだった。
トイレの話 針ノ木小屋のトイレは、外に三つ立っている。槍見荘だったか名前が付いているトイレは、
座ると前に四角い窓があって、良く晴れていれば槍ヶ岳が見えるらしい。その隣のトイレから出てきた
女性は連れの女性に駆け寄って、「ね、ねっ、凄いのよ、自然のままというか」と興奮している様子だ。
下を覗くと明るくて、すぐ右側の開口部へ垂れ流しとなっている。それだけならまだしも、そちら側のす
ぐそばはテントサイトになっているのである。うちのカミさんもびっくりしていた。
大沢小屋のおじさんの話では、大沢小屋は泊まる人は少なくて、途中休憩の人が多い。それで日中は
トイレにペーパーは置かないのだという。消耗が激しくて、時にはロールを持っていってしまう輩もいるの
だそうだ。 鳴沢といっていたので鳴沢岳のことだと思うが、2日前に危ないところは無いのだが、中年
のおばさんが何かにつまずいたのか、ころんで落ちて亡くなられたのだそうだ。ひとしきり中高年登山者
が多いのも困ったものだという話になってしまった。自動車の中で仮眠をとって、睡眠不足状態で登る
のは、中高年にとって特に良くないと云っていた。
蓮華岳 (7月18日)
午前3時半頃に起きて、蓮華岳(2798.6m)に行く人もいるし、5時頃になるとご来光を見に殆どの人
が針ノ木岳か蓮華岳の途中まで登って行ったらしい。天気が良くて遠くの山も見えるので、我々も起きて
小屋の外へ出てみた。朝食は5時半から食べられるので、空いている内に済ませてしまう。あまり食欲は
無いが味噌汁は美味しかった。どうやらお腹の調子も回復した様で、6時半頃蓮華岳へ向かう。
最初が少し急だけで、あとはなだらかでハイマツが綺麗だし、色々な花が一生懸命に咲いているという
感じで気持の良い尾根歩きが楽しめた。周囲の山々の眺めも鮮やかで、稜線を登山道が続いているの
が判る。所々に人影も認められた。カミさんは立山や剱岳が眺められたのが良かったみたいだ。
コマクサ
コマクサが石の間からそこここに顔を出して花を咲かせている。一面に群生しているところもあるのだが、
何しろ花が小さいから、登山道から離れていると群生しているなと判るだけなのだ。でも、登山道の両側
に沢山見られるので、写真は撮れるのだが、風が強くていつも震える様に揺れているのだ。
蓮華岳頂上手前で振り返る
蓮華岳は優しい山だ。7人のおばさんグループが降りていってからは、この山は単独で歩く人が数人登っ
て来ただけの静かな山になった。もっと留まっていたい様な気がして、ゆっくりと花や周りの山並みを眺め
ながら降りた。蓮華岳も峠から往復2時間位だ。 それから峠に別れを告げて雪渓を下り帰途についた。
登山道には花が多い 向こうの山は針ノ木岳
久しぶりの小屋泊まりだった。また、大町まで車でどの位の時間が掛かるか判らない。何しろ糸魚川から
国道148号線を走るのは、25年振りくらいなのだ。その時は白馬岳へ登ったのだが、国道もだいぶ良くな
ったのだろう、以外と早く着くことができた。朝早く福井を出れば、大沢小屋に泊まることなく針ノ木岳、蓮華
岳を廻って来られる。 日帰りする人もいるらしいが、そういう人は私らと身体の仕組みが違うのだろう。
今回、小屋泊まりをして持って行く物とか、食べ物や飲み物に工夫が必要なことがわかった。だいぶ発汗し
て食欲が減退し、小屋の食事を全部食べることが出来なかったし、腸の不調や靴づれなど、いろいろなこと
を経験した山行だった。
2万5千分の1地図 「黒部湖」
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ちょっと疲れてますかね・・蓮華岳の三角点に手を載せて・・一応は元気です。