北陸の峠道


蝿帽子峠


蝿帽子峠(978m)を越える道は、昔、美濃と越前を結ぶ重要な道で
あり、幕末に水戸浪士・天狗党がここを越えた話はあまりにも有名で幾つものホームページに詳しく述べられている。

と言う訳で、是非辿ってみたい峠道だった。温見峠から岐阜県側に8kmばかり下ると、オフロード車のコースがあり、そこに左の写真の看板が立っている。昔はこの様な字が用いられていたそうである。

根尾西谷川の岸に立って対岸を見ると、木陰で暗いが、赤い衣装のお地蔵さんを見つけることが出来る。そこが登り口なのだ。すぐ横がコワタビ谷の出口と言うか入り口と言うか、沢が合流している。

根尾西谷川の流れはなかなかのもので、何処を渡ろうかとあちこち探したが、結局お地蔵さんからあまり離れていない処を、ズボンを膝上までまくし上げ、ゴムぞうりで水の中に入った。しかし、膝より上まで浸かってしまった。


今日は、登り始めるまで時間が掛かり、右の写真のお地蔵さんの横から歩き出したのが10時45分となってしまった。沢から尾根に取り付くので最初は急登だが、最初の40分位だけで、後は尾根の横
腹に付けられた緩い登り易い道だ。
それに夏草と云った物も無く、ハッキリとした道である。まあ、上の方になると笹が生えていたり、危なっかしい処もあるが、あまり利用しない道だから仕方がない。一カ所だけは危なくて、その上の尾根へ登
って道の先へ降りた。そのままその尾根を行くと蝿帽子嶺へ行くは
ずなのだ。

1時間半歩いた処で12時を過ぎたので、買ってきたサンドイッチを食べた。1時頃までには峠に着きたいのでゆっくりしていられない。

その先は登りらしい登りは無く、多少歩きにくいところがある程度だ。しかし、陽が射してきて暑くなってきた。  


  13時10分に峠に到着。左の写真の顔の大きなお地蔵さんが  いた。あまりに陽射しが強くてお地蔵さんの顔がうまく撮れなか  ったのが残念。
 このお地蔵さんは、いつ頃からここに座っているのだろう。柳田国
 男氏がこの峠を越えたとき、峠に地蔵堂があったと記しているそう  だ。(柳田国男著「秋風帖」

 峠だから大野への道があるはずだが、草ぼうぼうで笹生川ダムの  方から登るのは難しいらしい。何しろ暑い。下を向くと汗が顔からし たたり落ちる。冷たいビールをいっきに飲んで下山とする。時間が
 あれば藪漕ぎして蝿帽子嶺へ行きたいところだが、私の場合帰り
 に何が起こるか判らないですからね。

 そして、やっぱり起きたのです。私は冒険好きなのか、それとも単  に無謀なだけなのか。

 帰りはコワタビ谷へ降りて沢を歩いて登山口に戻った。と云うと何
 だかベテランみたいで格好いいが、何回も道に迷い、おまけにたよ りのGPSが、急に何処か他国の緯度経度を表示して使い物にな
                


らなくなってしまったのである。

登りは間違いにくいが、下りは二股になっていたり、登るときと目からの認識の状況がだいぶ違うのだ。ま、慎重を期せば問題ないのだが
ビールを飲んで行け行けどんどんと云う感じだったのだ。

でも、道に迷ったら谷筋を降りれば間違い無い。危なくない谷筋ならばの話だが、ちゃんと登山口に出てきた。しかし、沢の中は早く歩けないので時間が掛かることこのうえない。2時間以上もぼちゃぼちゃ
と歩いたのである。

右の写真がコワタビ谷の沢の出口だ。左10mくらいに登山口があ
る。根尾西谷川はそのままぼちゃぼちゃと渡ったが、朝方より増水し
ていて、これ以上増水したら慎重に浅瀬を探さなければならないと思った。間もなく5時になるところだった。

蝿帽子峠への道は、今まで登ったU字型に掘られた峠道とは違っていたが、登りやすく創られた点では峠道らしい良い道だった。

家でズボンを脱いだら小さな巻き貝が落ちたのでした。


(’01・07・20)


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