福井の小さな山歩記


銀杏峰(1999・11・06)


銀杏峰(げなんぼ・1441m)は2回目である。8年前の4月下旬、かみさんと登っ
た。こぶしの白い花が沢山咲いていてなかなか良い雰囲気だった。その時とは
登山口の場所が違うところのようで、すぐに急な登りだ。

呼吸があがらない様に初めからゆっくりとしたペースで登る。しばらくすると上の
方から澄んだ鈴の音が聞こえてきた。南部鉄器の風鈴の音みたいで、綺麗な女
性かもしれないと思ってしまう。しかし、実際は田舎田舎した爺さんだった。

ずっと急な登りが続く。9時40分に登り始めてちょうど2時間で頂上に着いたので
あるが、その間に10人位の人が下りてきた。最初に下りてきたのが屈強なおば
さんで,Tシャツ姿でどどーっとばかりに下りていったのである。熊も逃げて行くの
ではと頂上では噂しあったのだ。山頂の手前は高原状になっていて、とても気持
ち良く歩けるところだ。8年前に来た時は雪に覆われていた。

頂上は360度の見晴らし、ぽかぽかと風が無く暖かい。10人強が座れるかとい
った広さである。


頂上には中年の男性2人だけだった。やがて鈴の爺さんが遅れて登って来た。
年々山が遠くなる様だと云う。なかなか上手いことを言う。誰かが山を動かしたな
とか冗談を言っていたかと思うと,銀河系に星が何十億あるとか壮大な話しを始
める。定年退職の年金生活で,先週は荒島岳に登ったが歩くのが遅くて頂上ま
で行かずに戻ったとか。普通の日の方がすいていて良いとか言う。まあそういう
生活をしているらしい。

私が、朝早く登った方が、空気が澄んでいて北アルプスまで見えますよと言うと
それは判っているけど、朝早いと家内の手前もあるしねと言う。この爺さんも気を
使っているのだなと思った。下りもこの爺さんはゆっくりで、私が追い越して行くと
き,五時までに帰ればいいのだからと言っていた。それが、あまり早く帰ってもど
うしようもないし、五時過ぎても家の者に悪いしと言っている様な気がした。
それにしてもよく滑って辛い下りだ。

ほんとに鈴の爺さんはなかなか下りて来なかった。私が登山口に着いて20分た
っても鈴の音は聞こえて来なかった。でも、上にはもう一人若い男がいたから大
丈夫だろう。双眼鏡片手に地下足袋姿の大柄なそのお兄さんは、頂上に着くなり
「恥ずかしながらただいま到着しました」と大声でみんなに告げたのである。

登山口から今登ってきた山を見上げる。紅葉が素晴らしい。




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