隠れ家とその周辺点描
隠れキリシタンの寺・七尾の本行寺
24日朝は街のコンビニへ新聞を買いに行った。 新聞に8年程前に歩いたことのある七尾の山の寺寺院群の
本行寺で 明日「隠れキリシタン祭り」が催されるとあった。なんでもキリシタン大名として有名な高山右近が永年
この寺に身を寄せていたそうで、この祭りは江戸時代の禁教令下で、前田家の重臣や信者らによってひそかに
営まれた「アニマー祭」(霊魂祭)にちなんで行われるとのこと。
そこで「キリシタン秘仏」が開帳され「隠れキリシタン料理」というのか、霊魂祭膳と呼ばれた料理が振舞われると
いうのである。これは行かねばなるまいということになった。最近は七尾方面は全く行ってないので、七尾に向かう
道路の変貌ぶりに驚いた。山の寺寺院群は非常に行き易い。
山の寺寺院群の中の本行寺山門
着いたときには住職による茶室やその前の庭について説明が終わるところだった。寺自体は法華宗で
これも有名
な茶人・円山梅雪による創建だという。それで「きく亭」と呼ばれる二間続きの書院造り茶室が残されている。次は
学者先生による「高山右近と加賀藩」というお話があり、大変興味深い話だった。
そしていよいよ「霊魂祭膳」が出されるた。料理はポルトガル料理の影響を受けていて「南蛮正月膳」とも呼ばれ
たという。ご飯は大唐米(赤米の一種で赤飯の代用とある)、イモのでんぷんを使ったジンダゴ(神団子)汁、ヒロ
ウス(がんもどき)の煮物、イカの墨煮、柿の酢の物、高山右近は柿が大好物だったのでこの一品があると想像
されるのだが、今の時期柿はないので、干し柿が載せられていた。
霊魂祭膳
デザートとしてカルカン(もともとは自然薯と砂糖を加えて泡立たせて蒸したものらしい、もっちりとした蒸しパンだ)
資料には12月23日の誕生祭膳のデザートのかたちで記載されていたが、砂糖を固めて人形の形にした金價糖が
金沢の老舗の御菓子屋さんのご好意によって作られて、戴くことになった。
金價糖で作った人形
金沢では今でも正月などに砂糖を固めた金花糖が作られているそうだが、この人形の形というのは、オランダから
絵か写真を送って貰い、それを見て作ったのだという。
その当時の料理の味を再現するのは難しいと思うが、現在とたいして違いはなかったのではないかと思われる。
キリシタン秘仏 体内の十字架が見えている
「キリシタン秘仏」は、高僧と思われる坐像の、合掌した両腕を左右にずらすと
体内の十字架が見えるという
ものだった。まさに隠れキリシタンと云う感じを抱かせる物だ。 高山右近が日本から追放されて出国するときに
書いた細川忠興宛の最後の書状の下書きがあった。南禅寺の御守り札の裏に書かれている。
高山右近最後の書状原稿
私はお茶の作法を知らないので参加しなかったが、「きく亭」では抹茶が振舞われた。高山右近は秀でた武将で
あったが、千利休の高弟といわれる茶人でもあったし、築城技術などもすぐれていたという。この茶室で城の設計
をしたり、海外との交易などにも携わっていたと言われている。
茶室「きく亭」
<余聞>
キリシタン料理を食べるとき、料理の内容などが記載された新聞記事のコピーが配られたのだ。その終わりの方に
料理は50食限定で千五百円とある。カミさんは二人だから3千円払わなければと云うのだ。誰も払っている様子は
ないので、封筒も無いし住職さんに聞いてみたら、お金は要らないというのだ。なんでしたら賽銭箱にとおっしゃるの
で、3千円を入れてきた。帰ってその新聞のコピーをよく見たら、2002年(平成14年)5月17日とあったのだ。そう
云えば昨日の新聞には入場無料とあった。でも、それだけお金を払う価値は充分にあったと思う。
(’08年 5月 25日)