北陸の峠道


ブナクラ峠(乗越)

ブナクラ峠は、馬場島からブナクラ谷を遡り、赤谷山と猫又山の鞍部、標高は約1740m程の処だ。
二つの山への分岐点なので、この峠を目的地として登る人は珍しいのではと思っていたが、今回登って
みて地元の人に聞いたところでは、そうでも無いらしい。
ブナクラ峠を越える道は、昔は馬場島から黒部峡谷側の小黒部温泉(現在は廃湯)や1868(慶応4)
年開湯の西仙人の湯(現在の仙人谷温泉)へ通じていたという。しかし、仙人谷温泉まではひどく遠い。
大窓や小窓、剱岳などを越えたのかも知れない。  仙人の湯の西、池ノ平山から小窓、小窓ノ頭辺りは
戦略金属のモリブデンを産出した小黒部鉱山があったので、戦争中は活況を呈したと云うから、ちゃんと
した道があったと思う。


ブナクラ谷取水堰堤 正面の左に鉄梯子がある。

私も赤谷山へ登りたかったが、朝早く登り始めなければならないので、まずは下見ということで、ゆっく
りと峠歩きを楽しもうということにした。これは全く正解だった。なかなか辛い峠道だったのである。馬場島
の剱岳の登山口付近は、停める所も無い程の車だ。路上に駐車してブナクラ谷の取水堰堤までの林道を
 歩いた。堰堤に着くと車が7台ほど停まっていて、車で来れば良かったのにと思う。35分ほどは掛かった。

すぐに「登らないで下さい」とある鉄梯子を上って登山道に入る。小ブナクラ谷、大ブナクラ谷を渉り樹林
の中へ。風が無く蒸し暑い。汗が流れる。それも今日は半端でない汗だ。流れる水の少ない谷を渉ったが
そこの水は冷たくて美味しかった。空になったペットボトルにも詰めた。途中、湧き水も多く 道を覆って流れ
ている処が何箇所もある。


鞍部が峠 まだまだ遠い

初めての道は長く感じる。今日は体調のせいか特にそう思った。その為か、岩屋を過ぎて谷に出たので
戸倉谷と勘違いして、あと一時間と思ったが、また流れの多い谷を渉ることになった。そこが戸倉谷らしい。
そこからだんだんと急で歩きにくい道となって、休み休みの辛い歩きとなった。 帽子のツバ先から汗が止ま
ることなく滴り落ちて、頭が少しボーッとしてきた。熱中症にならないか心配になり、小刻みに休憩して水を
飲んだ。今までにこんなに水を飲んだことはない。この道は水が豊富で助かる。最後に大きなごろごろした
岩の上を歩いて峠に到着した。馬場島から4時間以上も掛かったのだ。


写真上:峠から望む唐松岳や白馬鑓ケ岳              写真下:登って来たブナクラ谷


峠に立つと白馬鑓、唐松、五竜岳の山々が連なるように眺められた。猫又の方へ少し登ると鹿島槍ヶ岳
が見えるとのことだが、今日はもうその余裕もない。冷たいビールが美味しかった。すぐに大阪から来たと
いう私くらいの年恰好のご夫婦が、猫又山への途中で引き返してこられたし、男の方が一人赤谷の途中
から引き返して来た。 ちょっと脚を痛めたとか。 そして元気のいい地元の方が峠目指して登って来た。
他に今日この峠を通過された方の多くが、猫又山から尾根を大猫山へ歩いて取水堰堤へ下る周回コース
だとのことだった。


峠のお地蔵さん

カミさんがコンビニのトロロ蕎麦をかき混ぜていたり、燻製のチーズを一切れづつ配っていたら、大阪の
ご婦人が豪華絢爛ですねと云うし、旦那がワインも出るのですかなどと言って笑い合った。大阪から来て
泊り込んであちこち登っているとのこと。福井の山も「登ってみねの福井の山」に載っているところは全部
登ったとかで、勝山に泊まり込んで登ったりしたそうだ。老後安泰という感じのご夫婦だ。昨日も今日も
馬場島泊まりとのことだった。

1995年に建立されたという比較的新しいお地蔵さんと写真を撮って、午後1時半頃、峠を後にした。


荒々しく流れるブナクラ谷

 (’07年 8月 25日)
2万5千分の1地図「剱岳」

---- 参考までにGPSでの軌跡です ----
「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)
を使用したものである。(承認番号 平17総使、第657号) 」

001地点は馬場島の剱岳登山口前の路上に車を置いた処 ブナクラ取水堰堤は大ブナクラ谷の少し手前で
駐車場があります。 002地点はブナクラ峠、北アルプスでは多く場合「峠」を「乗越」と呼んでいるようです。


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ブナクラ峠にて