福井の小さな山歩記


宇津井谷山

宇津井谷山(1068.8m)は、2万5千分の1地図「冠山」で、冠山から北東へ9.5cm程の大野市と
池田町の境界線上にある。全体に歩く距離が長いし始めに冠山林道を1.5kmは歩かなければならな
いのが気になり、人の後を登るので道に迷う心配は無いとはいえ、行くかどうかだいぶ躊躇った。でも、
この機会を逃せば、まずこの山に登る機会はないと思って行くことにした。

冠山林道を白倉谷への入り口を過ぎて行くと、すぐに通行止めのトンネルとなる。この中へ車を停めて
アイゼンを付けて歩き出したのは7時くらいだった。私はアイゼンを付けるのが初めてだったのだ。一応
練習はしてきたのだが。トンネルを二つ抜けて、やがて左下に橋が見えてきて渡る。旧道らしくそこから
橋を二つ渡った処の左手から急な尾根に取り付いた。7時45分くらいになっていた。

地図を見て判るように標高差200mの急登だ。途中までは前を登る人が見えていたが、この急登の上
の方に来たときには全く人影が見えなくなってしまい、単独行みたいになってしまった。わざとゆっくり歩
いている訳ではなく 心拍数からいっていつも限界付近にいるのだ。血液への酸素の取り込みが低いの
だと思う。


急登を登りきってほっとしたブナの目立つ林 698m付近

やがて緩やかなブナの尾根にでる。周りの尾根が見渡せるところで、ぐるっと廻った高い尾根の上に人
影が見えた。私の脚で40分以上は離れているし、これからますます離れてしまう。でも黙々と歩くしか
ない。独りで歩くのは馴れているので、適当に休憩しては歩き続けた。幸いにして急登はないので脚が
進まないということはない。

992mのピークで皆さんカンジキに履き替えた様だ。私も腰を下ろしてアイゼンをカンジキに替えた。先の
方で叫び声が聞こえた。 カンジキを付けてしばし緩い下りで、前方のピークの白い斜面を登っている人が
見えた。後で考えるとこれが宇津井谷山の山頂だったのだ。私は間もなくセッピの続く処を歩いていたが
前方に身長の1.5倍程の崖が現れたのだ。どうも危ない。ここで引き返すかとも考えたが、近くへ来てみ
ると何とロープがたれていた。ロープを使って雪面に転がるようにして這い上がる。ロープは埋め込まれた
ピッケルから出ていた。すごいベテランがいるらしい。

広い山頂 そろそろ下山



山頂から見る 能郷白山か

そこからさっき遠くから見えた斜面を登っていったら、目の前に雪のテーブルを囲む宴会の人々が現れた
のである。到着だ。12時になるところだった。途中で引き返したのだと思っていたそうだ。 無理もない。
一時間ほど遅れたので、拍手で迎えられたりしたのではあるが、到着した時は宴会も終わりで片づけようか
と云うときだったのである。幸いなことに暖かい汁物が少し残っていて頂くことができて一息つくことが出来
た。それからバナナを一本食べるのがやっとで、20分後には下山開始となったのだ。ゆっくりと写真を撮る
ヒマもない。とても綺麗な展望が拡がっていたのだが。カミさんが、コッヘルなんて持っていっても、お父さん
には作っている時間はないから不要だと云っていたが正解だった。


下山途中に見る 金草岳

下山は絶対に一緒に行かないと帰れそうにないと思った。 まずは先程のロープの処だ。下で指示してくれ
るのでまずは無事通過。みんなが通過した後、ベテランの方がロープを回収する。 あとは登り始めの急登
だけが問題だと思っていたが、問題を起こしたは私を含めて最後を行く4人ほどだ。ちょっとルートを間違え
てしまい、急な斜面で動きがとれなくなってしまったのだ。また、若いベテランの方が助けにきてくれたので
ある。身軽にあっちこちホイホイ行くので全く感心してしまう。全然疲れを知らない様子なのである。

疲労困憊で林道に降り立った。これで安心なのだが、車までの林道歩きが長くて今日最大の苦痛だった。
やがて4時になろうとしていた。長い一日だった。帰りの車を運転していても、体が震えていて暖房を強く
して暖かいお茶も飲んだりしたのだが、ハンドルを握る右手指がやたらツルし、アクセルを踏む足もツルの
だ。熱いラーメンが食べたかった。

('05年3月20日)


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この宇津井谷山のコースは 始めの急登と山頂手前のガケ以外はとても歩きやすい尾根です