人形山

何日も前から雨の予報だったが、高速を五箇山に向かっていると、どうやら今日は昼過ぎまでは
もちそうな気がしてくる。

人形山(1726m)は、岐阜県と富山県の県境で、五箇山の田向の、あの流刑小屋のところの橋
を渡って林道を登る。何処から見るのか、どの山肌に現れるのか判らないが、悲しい民話が伝えら
れる手をつないだ姉妹の雪形が残雪時に望まれるという。

登山口には冷たい水が引かれてある。登りは初めは緩やかに、急登が続く訳でもないが、道のり
は長い。女性3人の後に続いて歩き始めたのだが、ペースが速いので私と女性一人は付いていけ
なくなってしまった。額から汗が滴り落ちる。汗をかき過ぎているようだ。
のろい二人はだいぶ遅れて、一番最後に鳥居の立つ宮屋敷跡に着いた。目の前にこれから登る
人形山がその稜線と共に望まれる。



宮屋敷跡

宮屋敷跡からは、平坦な道が多く足の運びも速くなる。しかし、県境稜線の分岐点への急登に来る
と、途端に足が前に出なくなる。またまた皆より遅れて分岐点に着く。
ここからの眺望は晴れていれば素晴らしいに違いない。白山をはじめ周辺の山々がガスの合間に
見え隠れしていた。山の位置を記した銘板もあり休むのに良い所だ。



県境稜線の分岐点 向こうに見えるのが人形山 ここから25分程

分岐点には、すぐに私一人となってしまい、私が人形山に向かう頃には、もう人形山から戻ってくる
有り様だ。人形山の頂上には訳の判らぬ円筒があったりして、あまり雰囲気としては良くない。食
事は分岐点だというので、すぐに引き返したが、健脚な方は三ケ辻山へ向かったというし、皆さんす
でに食事を終えている。やっとのことで漬け物で冷たいビールを飲むことができた。保冷剤を詰め込
んで来たので冷たいビールの美味いこと、最高だ。



人形山 山頂

ゆっくりと一本飲み終えたらそろそろ出発だという。まだ12時だ。あわててバナナを一本食べた。脚
の遅い者はゆっくりと食事もしていられない。今日は最初、頂上でラーメンでも食べようかと思い、水
やバーナー、燃料などを詰め込んだのだが、雨の可能性大なので、やめて荷を軽くしたのだ。正解
だった。ラーメンどころではなかったのである。

下りは例によって、皆さん速さを競うが如くですぐ姿が見えなくなってしまう。宮屋敷跡ではすばやく
果物の缶詰を食べた。甘いシロップが飲みたかったし、パンでは早く喉を通らない。最後の休憩の
後はもう皆さんに待ってて貰う必要もないので気楽に歩いて下った。

登山口へとだんだん近づいてくると、坂も緩くなり、太い杉がゆったりとした間隔で立ち並んでいる林
の中をゆっくりと歩く。今日も無事に登り終えた安堵感と、うぐいすの鳴き声だけの静寂さが心地よい。
一瞬、夢の中で遠くうぐいすの声を聞いているような感じを覚えたのでした。

(6月30日)


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