還暦つれづれ草


金時豆

私は甘く煮た金時豆が好きだ。煮る前の金時豆はどういう色合いをしているのか知らないのだが、ずっと
ウズラ豆というのだと思っていた。しかし、ウズラ豆は煮る前は特徴のある模様の付いた豆だったと子供
 の頃の記憶にある。煮た豆であんな模様を見たことは無いので、煮ると模様はみな消えてしまうのだろう。

近くに業務用食品スーパーというのがある。買い物をしているのは大方一般の人みたいだが、私も時々
ここをうろついて、どんな物が安いか偵察したりする。そこで金時豆の煮豆1kg292円というのを見つけて
買ってきたのだ。容器に移し替えたら、弁当箱の様な二つの容器が満タンになった。にんまりしてしまう。

我が家では、食事の後すぐに甘い物でお茶を飲む習性がある。かりんとうとかイモケンピ、その他いろいろ
なのだが、お陰でいつも二人してお腹がいっぱいになって苦しいなどと云いながらゴロゴロするのである。
その甘い物に、この金時豆は打ってつけだった。1kgの金時豆は8日間持った。大きな容器から直接食べ
ると、どの位食べたか判らないので、カミさんが小皿に取って食べろとうるさかった。しかし、それは正しい。

子供の頃、母が癌で床についていた時だと思うが、隣町の店に金時豆を買いにやらされたことがあった。
その店は、朝の内に行くと、今煮たばかりの湯気の出ているような煮豆類が店頭に山盛りとなって売られ
ていて、そこの金時豆が美味しいとかで、母が食べたかったのだろう。しかし、癌の発見が遅かったのか
母は癌が見つかってから半年ほどしか持たなかった。それで、私が隣町に金時豆を買いに行かされたの
は1回だけだったかも知れない。

もう50年も前のことだから記憶も定かでないが、母の病状もだいぶ悪化して、食べたい物をということで
歩いて20分は掛かる大井町駅近くのお店に赤飯を買いに行ったことがある。母はここの赤飯が美味しい
と云っていた。今は作りたての煮豆を売るような店は、この辺りでは見かけないが、赤飯は○○餅店とか
で蒸したての赤飯を売っている。その店ののぼりを見ると、昔、赤飯を買いに行かされたことを思い出した
りするのだ。

(’06年1月13日)

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